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2022.08.30

ボカロPとVOCALOID 市瀬るぽさん編 〜エレクトーンから始まったミクノポップ〜

ヤマハが開発した歌声合成技術、「VOCALOID(ボーカロイド)」。2003年のリリース以来進化を続け、現在はVOCALOID5に。また、各社よりVOCALOID向けのボイスバンクが発売されています。歌声合成技術を用いて作られたバーチャル・シンガーが歌う音楽としてジャンル「ボカロ」が確立され、今では日々多くのボカロ曲が投稿され、愛されるようになりました。ボカロ文化を支えるボカロPとヤマハが開発した歌声合成技術VOCALOIDの出会いや関係性を紐解くスペシャルインタビューが「ボカロPとVOCALOID」。


今回は2018年マジカルミライ楽曲コンテストにて「ボクラノート」で準グランプリを獲得、『プロセカ』のリリース前に実施された一緒につくろう!楽曲コンテスト」では「alive」でグランプリを獲得するなど注目を集めるボカロP、市瀬るぽ(いちのせるぽ)さんにお話を伺いました。


市瀬るぽさんプロフィール

 

 

鏡音リンを使ったエレクトロな楽曲をリリースするボカロP、作曲家、作詞家、DJ。2011年の初投稿より精力的に活動しマジカルミライ楽曲コンテスト準グランプリ、『プロセカ』のリリース前に実施された一緒につくろう!楽曲コンテスト」グランプリなどの経歴をもつ。2021年にはテレビ朝日系全国放送「musicる TV」の番組内にて開催された『musicるクリエーターバトル』にて最終選考に残り、草野華余子とのコライトで制作した楽曲「DiVE」がFANTASTICS from EXILE TRIBEへの提供された。

 

 

 

椎名もたさんに教えてもらったVOCALOIDの世界

Y:VOCALOIDを知ったきっかけを教えて下さい。


市:きっかけは幼稚園からの幼馴染の友人です。椎名もた君という人で、小さい頃から通っていたエレクトーン教室でも一緒でした。小中学校は違う学校だったんですが、高校は一緒で、お昼ごはんを一緒に食べていたらボカロPをやっていると突然カミングアウトされて(苦笑)。

 

<当時の市瀬るぽさん>

それで彼の曲を聞いたのがVOCALOIDとの出会いなんです。最初に聞いたのは「そらのサカナ」っていう曲で、MVも含めてすごく芸術的なセンスを感じて、すごくカッコいいなと思いました。それで、同じ音楽教室に通ってるんだから僕にも作れるでしょ!って思って(笑)、僕もボカロPになりたいって言ったら「まずは初音ミク買いなよ」って言われて。放課後に電気屋さんに行って初音ミクV2を買いました。

 

<当時購入した初音ミクV2>

Y:最初の曲で大変だったことを教えて下さい。


市:最初に投稿した曲は「Paranoia」っていう曲なんですけど、大変だったのは調声ですね。椎名もた君に聞いてもらったり、ボカロPさんのインタビュー記事を読んだりして勉強しました。自分の個性を出しつつアーティスティックに聞かせる方法を見つけるまでが大変でした。


Y:見つけるまでにどのくらいの時間がかかったのでしょうか。


市:1〜2年はかかったと思います。本当は消したいんですけど、その頃の曲も戒めだと思って全部残してあります。新しい世代の人の役に立てばいいなと思っています。

Y:VOCALOIDでの作曲を始めた頃はどんな音楽を聞いていたのでしょうか。


市:高校生の頃はPerfumeとか。ボカロPを目指すようになってからはDECO*27さんを聞いていました。あとは椎名もた君の曲をずっと聞いてましたね(苦笑)。それと中学1年生の頃からMr.Childrenが好きです。櫻井さんの歌声だけでなく、メロディで押し込んでくる音楽だと思うんです。「SUPERMARKETFANTASY」っていうアルバムがあるんですけど、アルバムとしての完成度がものすごく高いんです。中学生ながら感動して、すごくささりましたね。今でもMr.Childrenの曲が頭の奥深くにあって、僕が作っている曲もすごく影響を受けていると思っています。ボカロは歌ものなので、メロディが重要だと思っているんです。そこはPOPSの考え方を踏襲しているというか。いわゆるミクノポップという路線だと思っています。


Y:市瀬るぽさんの曲を最初に聞いた時に、エレクトロといってもとてもキラキラしていて、POPSだなっていう印象を受けたんです。その理由が少しわかった気がしました。椎名もたさんの影響も大きいと思いますが、椎名もたさんと出会う前から音楽活動をしていたのでしょうか。


市:中学の頃、YEF(ヤマハエレクトーンフェスティバル、当時の名称は*JEF)っていうのに出ていて、そこではエレクトーンのオリジナル曲を作って参加していました。


*YEF(ヤマハエレクトーンフェスティバル)
ヤマハが、エレクトーン教室の学習成果の披露およびエレクトーン演奏の楽しみを発信する場と
して、また演奏力・音楽力向上を目的として開催する大会。
https://jp.yamaha.com/products/contents/keyboards/electone_station/event_concert/yef/index.html


作曲はエレクトーンの先生に習っていたんですが、エレクトーンって作曲を勉強するにはもってこいの楽器だと思うんですよね。パソコンで作曲し始めてからもパソコンをインターフェース経由でエレクトーンにつなげて使っていました。音源としては最高級だと思うので、これは僕の武器なんじゃないかなって思いましたね。

<当時の制作環境>

Y:ボカロPや作曲家で有名になりたいとか、そういう考えはあったのでしょうか。


市:エレクトーンの他に吹奏楽部もやっていて、コンクールで優勝したいという目標はありましたけど、将来を考えていたわけではなかったです。音楽で食べていこうっていうのはボカロPになってから考え始めたんです。


Y:吹奏楽部も!かなり音楽活動をされていたんですね。吹奏楽部もエレクトーンもいまのボカロP活動の役にたっているのでしょうか。


市:吹奏楽部ではチューバだったんですが、吹奏楽の経験は作曲という意味ではすごく役に立っています。


Y:もっと生楽器が多いアレンジになりそうですが、市瀬るぽさんの曲はエレクトロですよね。エレクトロが好きになったきっかけはあるのでしょうか。


市:最初からエレクトロな曲ではなかったんです。上京したころkzさん(livetune)の曲を聞いた時にミクとオケの親和性がすごいなって感動したんです。それでニコニコ超会議に行ってkzさんがDJやってて、すごくかっこよかったんです。それを見て、「オレ、ここに出たい!」って思ったんですよね。エレクトロのスタイルでDJやって、それにあわせてみんながペンライト振っていたあのステージを見て、ひとつの目標を感じたんです。そしたらあのステージで流してカッコいい曲を作らなきゃって思って、そこからですね。


※市瀬るぽさんはニコニコ超会議2022 超ボカニコ2022 supported by 東武トップツアーズにてDJとして出演を果たしました!https://live.nicovideo.jp/watch/lv336039052

鏡音リンをアイドルとしてプロデュース!

Y:ボカロ曲を作るうえで特に意識していることがあれば教えて下さい。


市:人間の歌手に曲を提供する場合、その歌手のファンのことを考えて曲を作ると思うんです。ボカロの場合でも同じで、それぞれのキャラクターにファンがいるので、そのファンの皆さんのことを考えて、届いてほしいという想いを込めて作っています。


Y:有名な歌手に曲を歌ってもらうというイメージを持っているということですね。


市:有名なんですけどVOCALOIDは断らないので、なんでも歌ってくれるんです。だからファンがいる上で自分の個性を乗せた曲が作れるんです。そんなこと人間の歌手だったらできないじゃないですか。

<制作の難しさを語る市瀬るぽさん>


Y:最近では人間の歌手にも楽曲提供をされていますが、人間とVOCALOIDの違いはどのような部分ですか。


市:VOCALOIDの場合は完成地点を自分で決めることができて、いつまでも直すことができるんです。それが難しくもあるんですが、人間の場合は歌ってもらったらそこがある意味完成地点になってしまうんですよね。レコーディングに立ち会って、自分でディレクションして、歌ってもらって。その場でその曲が決まってしまうことがすごく難しいなと思っています。


Y:市瀬るぽさんは最初の頃は初音ミクを使われていますが、途中からリンですよね。鏡音リン・レンを買ったきっかけはなんだったのでしょうか。


市:初音ミクを使っていて、人と違うことをしたくなってきたんです。初音ミクでエレクトロっていうのはたくさんあったんですけど、リン・レンでエレクトロな曲っていうのは少ないなと思ったんですよね。それで、2018年のマジカルミライで準グランプリをとった「ボクラノート」っていう曲でリンを使ってみたんです。そうしたらリンを好きな人がたくさん聞いてくれるようになって、リンを特徴のひとつにして活動していこうと、方針を変更したんです。リンを好きな人にも恩返ししたいなと思っていて、コンテストとかに出す時はすごくリン推しで曲を作っています。プロセカの楽曲コンテストも、ゲームで自分の曲が流れたらリンのファンの人たちも喜んでくれるかなとか、考えていました。


Y:もう初音ミクは使わないんですか?


市:ミクに歌ってほしい時っていうのは、自分の言いたいことを代弁してもらいたい時なんです。心に秘めているものを歌ってもらうというか。でもリンに歌ってもらいたい時は、アイドルとしてリンをプロデュースするようなイメージなんです。


Y:色々なボイスバンクを使ってきたと思いますが、一番好きなボイスバンクを教えて下さい。


市:やっぱり鏡音リンですね。僕のやりたかったこと、僕の目標を一緒に達成してくれたパートナーというか。「ボクラノート」も「alive」も鏡音リンがいなければできなかった曲だと思います。キャラクターとしてもボイスバンクとしても鏡音リンが好きです。

<好きなボイスバンクは鏡音リンだそうだ>

Y:市瀬るぽさんが考えるリンの良いところを教えて下さい。


市:パワフルなところですね。他のボカロとは比較にならないくらいパワフルなんです。ミクは良い意味でも悪い意味でも真のバーチャル・シンガーなんですけど、リンはもう少しキャラクターがあるんです。リンにマッチするメロディがあると思っていて、そこにハマるとすごくいいんですよね。僕のメロディはリンに合うんだなと感じています。

これからも活動の主軸はボカロP

Y:VOCALOIDが無かったら、いま作曲はしているのでしょうか。


市:作ってないんじゃないかな、、、。エレクトーンはやっていても大学進学のあたりでやめて就職の方向に行くでしょうし。ボカロがなかったらここまで作曲家になりたいとは、思っていなかったと思います。あと、どれだけ楽曲提供するようになってもボカロPは絶対やめないと思います。ピノキオピーさんみたいな、色々やるけど主軸の活動はボカロ、というボカロPになりたいなと思っています。


Y:色々な活動ということでは、洗足学園音楽大学で「Project Miku」という活動をしていたとお伺いしました。


市:在学中にマジカルミライをお手本としたバーチャルライブで、大学の研究の一環でやったんです。SHUさんっていうデジタルアーティストの方にお願いしてミクのモデリングをしてもらって、動かしたりして。

Music Design Live Electro 2016 「 Project Miku // toxicant / idiotic 」(作詞・作曲:Ritty)

https://youtu.be/uLYU_q64Bpo

卒業後にも学校から声をかけてもらって、ミクとオーケストラのコラボに携わりました。ミクがオーケストラのテンポ感についていってダンスをするんですけど、テンポ感のコントロールとかがかなり難しくて苦労しました。

<実際のステージの様子>


Y:すごいですね!実際に見てみたかったです。最後に、これからボカロPになりたい人に向けてアドバイス、メッセージをお願いします。


市:ボカロ曲を作る上では必ずコンピュータを使うので、そこが難しくて、必ず壁に当たると思うんです。でも諦めないで曲を作って完成させてほしいと思います。そして完成したら絶対に投稿してほしいんです。投稿したら何が起こるかわからない世界で、バズるかもしれないし、埋もれるかもしれない。でも必ず誰かは聞いてくれる、絶対に0再生では終わらないんです。そこで生まれるリアクションで次につながると思うんです。


Y:自分がダメって思うものほどあたったりしますからね。


市:そうなんですよ、偶然当たるということも、投稿しないと起こらないですからね。まずはアウトプットしてもらいたいです。投稿する前に挫折しちゃうのは本当にもったいないです。


Y:すばらしいアドバイス、ありがとうございました。


市:ヤマハさんには本当にお世話になっています、ありがとうございました。

記事制作協力:合同会社SoundWorksK Marketing


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